まとめ
このページは、「日本語」の特徴ついて説明しています。
日本語の特徴
独自性
- 世界のどの言語体系にも属さない孤立言語
- 文字のない時代の言葉をそのまま受け継ぐ言語
- 自然の音を「言葉」として受け取る感覚を持つ言語
- 比類なき多彩な表現力を持つ言語
- 世界の最先端文明を取り込んだ言語
- 使いこなすことが世界でも最も難しい言語のひとつ
多様性
- 新しい語彙を作り易い。
- 心理内容を表す感情関係の語が非常に豊か。
語彙の多様性については次の3点が挙げられる。
語種の多様性
日本語は語種から、和語、漢語、外来語、混種語と4つの種類が分類できる。
和語は元々日本で作られた言葉である。大和ことばも呼ばれる。例え、「山」「花」「水」などの言葉である。和語は日本語の語彙の基層をなし、日本語の中心部分をなしている重要な語種である。和語は日本人の日常生活で使用頻度の高い語種であり、意味がわかりやすくて、全ての日本人が理解できる。
4つの中で、数が最も多いのは漢語である。漢語とは中国語の文字である漢字で書かれ、日本語音で音読みされる語のことである。漢語の中でも2つ種類が分けられる。一つは中国から伝わっていた語である。例えば、「言語」「文学」などの言葉である。もう一つは日本人にとって、中国語の造語法に基づいて作られた語である。例えば、「政治」「社会」などで、明治時代に入ってから、西洋の新しい概念や物の名称を漢字で訳して多くの新しい漢語が作られた。
欧米諸国から入ってきて、普通カタカナで書かれた言葉は外来語と呼ばれる。外来語というのは他国語の語句を、だいたいもとの形で自国の語に借り入れて、一般的に自国語として使っているもののことである。明治時代と異なり近年は、新しい漢語が作られるよりは外来語として使うことが多い。
混種語とは和語、漢語、外来語のいずれかに属する2つ(以上)の語の結合によってできる語のことである。例えば、「表玄関」は和語と漢語を結び作った言葉である。
表記の多様性
日本語以外を母語とする者が、日本語を学び日本の文書を読む時、どのように短い文章でも、いくつか表記があると不思議な気持ちがあるのではないだろうか。確かに、英語や中国語などと違って、日本語は漢字、片仮名、平仮名、ローマ字と4つの表記がある。
世界の文字は主に表意文字と表音文字の2つの種類が分けられる。ひとつひとつの文字が意味を表している文字体系のことは表意文字と呼ばれる。中国語と日本語の漢字は表意文字に属する。もう一つは表音文字である。表音文字は音標文字ともいい、一つの文字で音素または音節を表す文字体系のことをいう。表音文字において、音素文字と音節文字が分けられる。音素文字は、表音文字のうち、音素が表記の単位になっている文字体系のこと。例えば、英語とフランス語は音素文字である。もう一つは音節文字といい、ひとつひとつの文字が音節を表す文字体系のことである。世界で少ないが、日本語の片仮名と平仮名はその種類に属する。日本語はその一つの言語の中に、表意文字と表音文字の両方がある珍しい言語だと言えるだろう。英語では、ローマ字で表記する。中国語では、漢字で書く。日本語はこの4つの表記法を備えることで語彙の多様性を実現している。
表現の多様性
同じ意味を表す言葉は類語、あるいは同義語と呼ばれる。日本語において、同じ意味をもっている表現がたくさんある。ここで、[食べる]を例として説明してみたいと思う。[食べる]と同じ意味の言葉を少し探してみれば、10語以上あるのではないか。例えば、「召し上がる」「食事する」[食う][いただく]などなどがある。ただ「食べる」という普通の動作でも、使う場面によって、違う言葉を使うことになる。相手は目上の人で、敬意を含めて「食べてください」という意味を表す時に「召し上がる」を使う。逆に「いただく」を使うと、自分または自分のことなどを謙る役割がある。話し手は男の人の場合は、「食う」を話し言葉としてよく使われる。
また、日本語はある分野で語彙は非常に豊富である。例えば、雨に関する語彙が非常に多い。雨の名前だけでも、「大雨」「小雨」「長雨」「霧雨」「日照り雨」などの他に、「春雨」「五月雨」「夕立ち」「秋雨」「時雨」など季節感と結びついた雨の名も多い。また、雨の降り方については,「お湿り」「小降り」「本降り」「大降り」「土砂降り」などの表現がある。金田一春彦は『日本語』という本に日本語語彙の豊富な分野について詳しくまとめている。
言葉には、「音とイメージ」がついてくるので、語彙や表現が豊かであれば、想像力も高くなり、アイデアが豊富に生まれる。よって、西洋文化が流入しても、日本はそのまま日本らしく存在しえたのも、日本語の賜物であると言える。
柔軟性
- 「洗い流す」「歩き続ける」「破り捨てる」「書きなぐる」「泣き明かす」といったように、2つの動詞をつなげることができる。意味の違う動詞を2つ繋げることで、その場面を克明に表現できる。
- 語順の柔軟性
- 漢字・仮名選択の柔軟性
効率性
- 日本語が示す個別的特徴は、全体としては非常に簡潔で規則性が高いものが多い。つまり、日本語はできるだけ単純な仕組みを用いて、他の言語が表すのと同じ内容を表すような方法を選択している、表現上の効率性が高い言語だと言える。
- 母音が5つしかない。子音の数もあまり多くない。
- 仮名文字は、ほぼ文字名と発音が一致し、1つの音しか表さない。
- 不規則動詞が2つしかない。「来る」と「する」のみ。
- 文法上、男性と女性、人間と物を区別しない。
- 文法上、物が数えられるかどうか、単数か複数かは問題にならない。
- 状況依存性・文脈依存性が高い。柔軟性が高い。よって伝達効率が高い。
コミュニケーションとの関連性
コミュニケーションには、”HC” High Context Communication(高文脈型コミュニケーション)と”LC” Low Context Communication(低文脈型コミュニケーション)があり、日本語は高文脈型に属する。
高文脈型は全体主義的な考えを持つ文化から生まれており、非言語のコミュニケーションが多いことが特徴である。人間関係が密接で情報が共有されるため、言葉以外の文脈や状況までコミュニケーションの前提としている。また、全体との協調や調和を大事にするため、主体的でない間接表現が多く、遠まわしで曖昧な言い回しが多いのです。例えば『どうも』という副詞だけで日本語は様々な意味を表現出来る。『どうも』の後にくる言葉を言わなくても、相手が(勝手に)状況判断してくるため意味が通じてしまう。
英語は低文脈型に属する。低文脈型は個人主義的な考えを持つ文化から生まれており、個性を重視した主体的なコミュニケーションに価値をおく言語である。よって、伝達される情報は言葉の中にすべて入っており、逆に語られない言葉にはメッセージが存在しない事になる。自分の考えを言葉にはっきり出すため、日本人の目上の人に口答え出来ないような雰囲気はないが、分りきった内容でもいちいち言葉として表現する必要があったり、複雑な文法的なルールがあったりと日本人にはストレスに感じる部分も多くある。英語はお互いの意思を一つ一つ言葉で確認し合う低文脈型の文化圏で発達した言語であることを意識する必要がある。
関連項目
外部リンク