同性婚まとめ
2018.01.02
まとめ
憲法と同性婚
日本国憲法は、同性婚について何も言及していないため、同性婚の法制化は憲法上禁じられていない。憲法24条は、異性婚における夫婦間の平等と自由結婚の権利を定めたもので、同性婚を禁止した条文ではない。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
○2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
【同性婚のために憲法改正の必要なし】
昔は個人より家が大切にされ、戸主の同意が無いと結婚できませんでした。 憲法24条1項は2人の合意だけで結婚成立として男女が対等に生活できることを目的としたものです
「両性」は男女平等の理念を明らかにしたに過ぎません
憲法学者・木村草太さん
▼引用を読む
憲法24条で同性婚が禁じられないという見解は、
私の単独説というより、学会通説です。
青柳先生の教科書など、最新の教科書では、
同性婚が禁じられないことがはっきり書いてあったりします。
まあポイントだけお話すると
「婚姻は、両性の合意のみ」で成立するという条文ですが、
ここにいう「婚姻」が異性婚を指しているなら、
条文は、「異性婚は男女(両性)の合意だけで成立する」という条文で
同性婚についての含意はなくなります。
(異性婚を保護しないことは憲法24条違反だが、
同性婚を保護しなくても憲法24条違反ではない
・・・が、同性婚を保護しても憲法24条違反ではない、
という条文になる。
これは教科書でしばしば「同性婚は異性婚と同じ程度には保護されない」
と表現される)
他方、
「婚姻」が異性婚および同性婚の双方を指すなら
「両性」を男女とは理解できず
(そう理解すると、同性婚が男女の合意だけで成立してしまう・・・意味不明)
「両性」は男女のみならず男男、女女も指すことになり、
憲法24条は、同性婚をも保護することになる。
- 憲法が同性婚を禁止? 憲法学者・木村草太さん「そんな説はお笑い。今日でおしまい」(2015.4.25)
▼引用を読む
「憲法が同性婚を禁止しているという解釈は成り立ちません」——。憲法学者の木村草太・首都大学東京准教授が4月25日、東京都内で開かれた「同性婚」を考えるシンポジウムに登壇し、「憲法24条が同性婚を禁止しているという説(同性婚禁止説)」をバッサリと切り捨てた。
木村さんは「同性婚禁止説」と「同性婚合憲説」を比較・分析した結果として、「同性婚禁止説は、説得力が5分の1、憲法条文との整合性は4分の1しかない。条文の理念・趣旨との整合性は比べるべくもない。その一方で『お笑い度』は4.5倍ぐらいあります」と話した。
●「両性」は男女だけのこと?
どうしたら、「お笑い」になるのだろうか?
憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と書かれている。
木村さんはまず、「両性」が何を意味するのかがポイントだと話す。
この「両性」が、男女だけでなく男男・女女も含むと解釈すれば、同性婚は合憲だ。むしろ、「同性婚を保護しないと違憲」ということになる。これがひとつめの解釈だ。
●「婚姻」は異性婚だけを指す?
一方で、両性が「男女だけ」を指すと解釈した場合には、どうだろうか?
その場合、問題となってくるのが「婚姻」という言葉の指す意味だ。
もし、婚姻の意味が「異性婚だけ」だと考えるなら、同性婚は婚姻に含まれないことになる。そうすると、憲法24条は同性婚について何も言っていないことになる。それは、つまり、「同性婚は憲法で禁止されていない」ということだという。
それでは、婚姻が「異性婚だけでなく、同性婚も含む」と考えるとどうか?
「両性が『男女だけ』なのに、婚姻に同性婚を含むということはあり得ない。同性婚が男女の合意で成り立つなんて、そんなことは意味不明で、アホじゃないかという話になります」(木村さん)
●同性婚禁止説は「今日でおしまい」
そうなると結局、憲法24条の文言解釈からは、(1)憲法は同性婚について何も語っていないと考えるか、あるいは(2)男男・女女の同性婚も憲法上保護されると考えるか。このどちらかの説しか「存在し得ない」のだという。
木村さんは「このように、同性婚禁止説は条文の文言解釈のレベルでは成り立ちません。無理です。また、同性婚禁止説を憲法24条の趣旨・目的から導くのはもっと無理です」として、「同性婚禁止説は今日でおしまい」と、引導を渡していた。
●違憲訴訟なかったのが「不思議なぐらい」
ただ、現実問題として、日本で同性婚が公的に認められたケースはない。また民法の解釈では、「夫」「妻」「夫婦」という言葉が使われていることなどもあり、「同性婚は想定されない」という考え方が一般的だという。
同性婚を認めないそうした制度運用は「憲法違反」と言えないのだろうか?
シンポジウムを主催したLGBT支援法律家ネットワークの山下敏雅弁護士から「同性婚を認めないのは違憲だという裁判を起こしたらどういう結論になりますか」と尋ねられると、木村さんは「むしろ、そういう違憲訴訟がいままで起きなかったことが不思議なぐらいです。訴訟が起きたら、私が『違憲だ』という意見書を書きますよ」と請け負っていた。
山下弁護士は現在、日本弁護士連合会(日弁連)から政府に対して、「同性婚を認める法律を作るように」という勧告を出してもらうべく、人権救済申立の準備をしていると話していた。
▼引用を読む
■ 憲法24条にある「婚姻」という言葉の定義こそ問題
――同性婚に反対する人の中には「憲法24条では婚姻を両性の合意に基づくと書いてあり、つまり男女の合意ということであり同性婚は認められない」と主張する人がいます。
たしかに24条には「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と書いてあります。しかし、この条文が同性婚を否定していると解釈する人は、ここで言う「婚姻」の定義を明確にしていません。その定義が同性婚を否定しているかどうか判断するために重要な要素であるにも関わらず、です。婚姻とは何を指すのかを明確にする必要があります。
24条で言う「婚姻」にもしも同性婚が含まれるとすると、「同性婚が両性の合意によって成立する」というおかしな条文になってしまいます。ですから「ここで言う婚姻は異性婚という意味しかない」と解釈せざるをえないのです。
つまり24条は「異性婚」は両性の合意のみに基づいて成立するという意味なのです。ここに解釈の余地はありません。そうである以上、同性婚について禁止した条文ではないということです。
――なぜわざわざ「両性の」としたのでしょうか?
この条文ができた沿革ははっきりしています。旧民法では婚姻には戸主や親の同意が必要でした。当事者の意志が蔑ろにされていた。そして家庭の中で女性が非常に低い位置におかれていた。このために、両当事者の意志を尊重する、とりわけ女性の意志がないがしろにされてはならないということで、あえて両性という言葉にしたのです。
当たり前ですが、同性愛者の家庭には家庭内の男女の不平等は存在しません。ですから、家庭内の平等についての条文は同性者にはいらないのです。つまりこの条文は、同性愛者から見るならば、「家庭内に不平等があるかわいそうな異性愛者のために、特別に作られた条文」という位置づけになるでしょう。
弁護士・吉田昌史さん
- 池上彰のJAPANプロジェクトでの「同性婚と憲法」について(2015.9.10)
▼引用を読む
(前略)
そのVTR自体は特に何も思わないのだが,その前の部分で,同性婚と憲法の問題には看過できない問題があった。
それは,「憲法24条が同性婚を禁止しているというのが一般的解釈」とされたこと。
ミニドラマの中で,女性と結婚したいと,大学生の娘が言う。それについて,憲法を解説する役回りを与えられた祖父が「憲法24条が同性婚を禁止していると,一般に解釈されている」との趣旨の解説をするのである。
これは,明確な誤りである。
当然,僕の立場からすれば,憲法24条が同性婚を禁止しているという解釈は間違っていると思う。しかし,同条が同性婚を禁止しているとの解釈も世の中に存在するのは間違いない。
ではあるが,存在するということと,「一般にそう解釈されている」というのは,全く違う。
従来,日本の法学,憲法学の世界においては,24条と同性婚という問題は,十分な議論がなされてこなかった。またこの点についての判例も存在しない。
これまで,そもそも同性婚ということが想定されてこなかったのだから当然である。
そして,その状況は現在も大きく変わっていない。ようやく議論はされはじめたが,何か通説的な見解があるというのではない。
24条が同性婚を禁止していないというのは,別に当事者だけが願望的に主張しているのではなく,そう論じる学者もいる有力説である。むしろ,僕は,禁止されているという説をとっている論者を,それほど多くも見ていない。
安倍首相の答弁
▼引用を読む
首相、同性婚「現憲法で想定されぬ」 専門家には異論も
安倍晋三首相は18日の参院本会議で、同性婚について「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べた。専門家の間には、現行憲法は同性婚を排除していないとの見方もある。
日本を元気にする会の松田公太氏が、同性婚を認めるには憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」との規定が問題となるかただしたのに対し、首相が答えた。
首相は「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家庭のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」とも述べた。
一方、法学者の中には、同性婚に憲法改正は必要ないとの見解がある。
棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「憲法24条の主眼は、婚姻をかつての『家制度』から解放することにある。当時、同性婚を念頭に置いた議論はされておらず、排除しているとまでは言えない。憲法14条の法の下の平等などに照らせば同性婚を認めないのは問題だ」と話す。
性的少数者の法律問題に取り組む「LGBT支援法律家ネットワーク」の有志も16日、東京都渋谷区が同性カップルに結婚相当の関係を認める方針を示したのを受け、「憲法24条は同性婚を排除していない」などと指摘する文書を報道各社に出した。(二階堂友紀)
(朝日新聞デジタル 2015/02/18 20:01)
- 同性婚認める憲法改正「極めて慎重な検討要する」 安倍首相(2015.2.18)
▼引用を読む
安倍晋三首相は18日の参院本会議で、同性カップルと「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」などと定めた憲法24条との整合性について「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べた。その上で「認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家庭のあり方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えている」と強調した。
また、事実婚に対する法的保護に関しては「法律婚を尊重する意識が国民の間に幅広く浸透している」と指摘。「事実婚にどのような法的保護を与えるべきかはこのような国民意識を踏まえつつ、それぞれの法律の趣旨や目的などに照らして検討すべきだ」と続けた。
東京都渋谷区は12日、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する条例案を発表している。
民法と同性婚
民法は、第四編「親族」→第二章「婚姻」→第一節「婚姻の成立」→第一款「婚姻の要件」(731条~741条)において婚姻の成立要件について規定しているが、婚姻が異性カップルにのみ成立すると規定する条文はない。
(婚姻の届出)
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
戸籍法と同性婚
戸籍法は、第四章「届出」→第六節「婚姻」(第74条~第75条の2)第74条において、婚姻の届書に記載する事項として、「夫婦が称する氏」と規定しており、同性婚は想定されていないと解釈できる。そのため、日本において同性婚を認めるためには、この文言を改める必要があると考えられる。
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項
関連項目
外部リンク